■ 麻生さん(仮名)のケース
大手メーカーの部長職まで登りつめた菊池さん(51歳)。
順風満帆に見えたキャリアは、「早期退職優遇制度」という名のリストラ勧告によって一変しました。
信じていたのは、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」に書かれた〈65歳から月20万円〉の年金額。
しかし実際には――
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額面20万円
→税・保険料控除後は手取り17万円程度 -
さらにリストラ・転職による収入減で
→ 月14万円程度の額面 → 手取り11万円前後に低下
「安心できる老後設計」は、見込み違いによって崩れてしまったのです。
「ねんきん定期便」で誤解しやすいポイント
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額面と手取りの違い
年金は課税対象。
さらに65歳以降は介護保険料・国保(後期高齢医療)が天引きされます。 -
あくまで“見込額”にすぎない
「50歳時点の条件が60歳まで続いた場合」を仮定した額。
リストラ・役職定年・収入減で簡単に下がります。 -
年金だけでは生活費に届かない
総務省の統計によると、高齢夫婦世帯の平均支出は月25万円。
→ 手取り11~17万円では、毎月3~10万円の赤字が出るのが現実です。
手取りベースで見る「年金シミュレーション」
例)65歳から年金額が額面14万円(手取り11.2万円)だった場合
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65歳受給:
手取り11.2万円 × 12か月 × 30年 = 4,032万円 -
70歳繰下げ
(42%アップ → 額面19.9万円)
→ 手取り約15.9万円 × 12か月 × 25年 = 4,770万円 -
75歳繰下げ
(84%アップ → 額面25.8万円)
→ 手取り約20.6万円 × 12か月 × 20年 = 4,944万円
👉 額面シミュレーションでは「繰下げで6000万円超え」と見えますが、
手取りで考えると5000万円に届くかどうかの現実になります。
私たち世代への教訓
菊池さんのケースは決して他人事ではありません。
特に50代前半の「ねんきん定期便」には最高条件の数字が書かれがち。
鵜呑みにすると、後で「ウソだろ…」と絶句することになります。
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年金だけに頼る設計は危険
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資産形成・副収入の準備が必須
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支出最適化(住宅ローン・生活費の圧縮)もセットで考える
まとめ
「ねんきん定期便」は“参考値”にすぎません。
額面と手取りの差、そしてキャリアの変化による受給額の減少を考えれば、年金一本の老後設計はリスクが大きいことがわかります。
私自身(53歳)も退職準備を進める同世代として、この話は強烈にリアルに響きます。
手取りベースで考え、資産運用や副収入の準備を重ねていくことが、安心につながる唯一の道だと感じています。