【実態解説】教育訓練休暇給付金 ― 働きながら“学び直し”を目指す人の新制度、でも現場はどう動く?

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「スキルアップしたいけど、仕事と勉強の両立は難しい…」

「資格の勉強に専念したいけど、収入が途絶えるのは不安…」

そんな悩みに応える形で、

2025年10月からスタートしたのが「教育訓練休暇給付金」です。

一見すると夢のような制度。

けれど、制度を読み解くと、理想と現実のギャップが見えてきます。

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教育訓練休暇給付金とは?

この制度は、離職せずにスキルアップや資格取得に専念できるよう支援する仕組み

仕事を辞めずに「無給の教育訓練休暇」を取得する場合、

その間に雇用保険から生活費の一部(失業給付に相当)を支給してくれるというものです。

要するに――

「会社を辞めなくても、勉強期間中の生活を支える給付金」

という位置づけです。

どんな人が対象?

次の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 雇用保険に5年以上加入していること

  2. 休暇開始前2年間に、月11日以上働いた月が12か月以上あること

  3. 会社の就業規則に教育訓練休暇の制度があること

  4. 無給で30日以上の連続した教育訓練を受けること

つまり、「自分が受けたい」と思っても、会社の理解と制度整備がなければ使えません。

どんなケースで使える?

  • 外資系や海外部署への異動を目指して、語学習得に専念する

  • IT資格や専門スキルを高めるためにスクールに通う

  • 新しい分野に挑戦するためにリスキリングに時間を使う

現実的には、自己投資意欲の高い層(30代~50代)が対象になりやすい制度です。

 シミュレーションで見る支給額の目安

制度を理解するには、数字で見るのが一番わかりやすいです。

以下は、年齢・月収別の支給シミュレーション例です

(2025年時点の上限基準による試算)

年齢 月収 雇用保険
加入
給付上限
日数
日額目安 最大給付額
30歳 20万円 6年 90日 約4,600円 約42万円
40歳 30万円 10年 90日 約6,000円 約54万円
45歳 40万円 15年 120日 約7,000円 約84万円
50歳 45万円 20年 120日 約7,500円 約90万円
54歳 54万円 30年 150日 8,870円
(上限)
約133万円

📍 ポイント

  • 高収入・長期加入ほど給付額は増えますが、上限(8,870円/日)で頭打ち。

  • 30~40代でも、3か月休暇なら40~50万円程度の生活補助になります。

  • 給付金は非課税のため、手取り額としてはかなり実感しやすい支援です。

現場が抱える課題

一方で、実際の現場では次のような課題が立ちはだかります。

課題 内容
社会保険料の負担 休暇中も在籍扱いのため、厚生年金・健康保険料
を会社と本人で折半
する必要あり。
人員補填問題 30日以上の長期休暇では、
現場の人員をどう回すかが大きな課題。
制度整備の遅れ 「教育訓練休暇制度」が就業規則にない
企業が大多数。
社内公平性 一部社員だけが長期休暇を取ることへの
不満が出る懸念。

つまり、従業員が申請したくても、会社が承認できる体制にないケースが多いのです。

もし制度が使えたら…?

たとえば、54歳で月収54万円の方(加入30年)なら、
150日間の教育訓練休暇で約133万円の給付が受けられます。

さらに、その後に退職すれば、

失業給付(最大10か月)も続けて受け取ることが理論上は可能です。

ただし――

制度の趣旨はあくまで「離職せずにスキルアップを支援」するもの。

意図的に“給付リレー”のような使い方をすれば、ハローワークの審査で不支給・減額の可能性もあります。

 理想と現実のギャップ

この制度は「学び直し社会」を目指す理想の制度です。

しかし、現場ではまだ整備が追いついていません。

  • 従業員: 学びたいけど制度がない

  • 企業: 制度を作る余裕がない

  • 国: 制度をつくったが活用されない

この三者の“温度差”こそが、教育訓練休暇給付金の現実なのです。

それでも「知っておく」ことが大切

たとえ今すぐ使えなくても、この制度を知っておくことには意味があります。

いつか自社に導入されたとき、「あの制度、今なら使える」と気づけるかどうかで、人生の選択肢が広がります。

スキルアップ・キャリアチェンジ・リスキリング――

これらを本気で考えるなら、「教育訓練休暇給付金」は覚えておく価値のある制度です。

まとめ

見出し 内容
制度の目的 離職せずに学び直しを支援
対象者 雇用保険の一般被保険者(5年以上加入)
給付内容 賃金の一定割合(非課税・最大150日)
会社の協力 就業規則整備・社会保険継続・人員調整が必要
現状の課題 制度はあるが、使える環境が少ない
今後の展望 リスキリング時代の“希望の芽”として今後に期待

おわりに

「教育訓練休暇給付金」は、まだ始まったばかりの制度です。

今は利用できなくても、これをきっかけに

“働きながら学ぶ”という選択肢が当たり前になる時代を待ちたいものです。

いつか、30代も、40代も、50代も、

“もう一度学び直せる社会”が本当の意味で整うことを願って。

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