EPSは、企業の純利益を発行済み株式数で割った値を示します。
EPSは企業の利益性を評価するための重要な指標であり、投資家が企業の株式を購入する際の判断材料の一つとなります。
高いEPSを持つ企業は、株価が上昇する傾向にあります。
ただし、
EPSが高くてもその要因が一時的なものであった場合、将来の企業業績が悪化する可能性がありますので、EPSだけで判断するのではなく、企業の財務諸表全体を見て分析する必要があります。
EPSの計算式
当期純利益÷発行済株式総数
例えば、
Aという企業の当期純利益が10億円で発行済み株式数が1000万株の場合のEPSは以下のようになります。
10億円 ÷ 1000万株= 100円
したがって、この企業のEPSは1株当たり100円となります。
EPSが高いほど、1株当たりの利益が多くなるため、投資家からの評価が高まる可能性があります。
EPSの分子である当期純利益が増加すると、EPSは増加します。
過去のEPSの推移を見ることで、企業の成長性や安定性を判断することができます。
具体的に投資家に一番利用がある、Kabutan(株探)サイトからEPSを確認してみます。
Kabutan(株探)サイトでは「修正1株益」が「EPS」となっています。
三菱UFJ(8306)
「決算」→「業績推移」
EPSが過去数年間に渡って一定の増加傾向にある場合、企業は利益を着実に成長させている可能性が高く、安定した成長性を持つと考えられます。
三菱UFJさんは、着実に利益を成長させています。
EPSが増加する時
先程のAという企業の例で言うと、
当期純利益が10億円から 15億 に伸びた場合には次のようになります。
15億÷1000万円 =150円
また、
分母の発行済株式数が減れば、EPSは上昇します。
この発行済株式数を減らす方法には、自社株買いがあります。
自社株買いとは、企業が自ら発行した株を買い戻すことです。
自社株買いを行うことで分母となる発行済株式数が減少しますから、EPSの数値は増加します。
例えば、
発行済株式数が 1000万円株 から600万株に減少したら以下のようになります。
15億÷600万株=250円
上記のように、自社株を400万株買い戻したことにより、発行済株式数が600万株に減少しました。
当期純利益が増加しなくても、自社株買いによって発行済み株式数が減少すると、EPSも増加します。
自社株買いは、株主に還元するための手段の一つであり、EPSを増加させる効果があるため、企業の株価上昇につながることがあります。
しかし、
自社株買いが企業の業績改善や将来性の向上に繋がらない場合もあります。
自社株買いに使われる資金が本来の事業投資に回せないからです。
企業が自社株買いに大量の資金を投じることで、株価を維持または上昇させることができますが、同時にその資金を本来の事業投資に回すことができなくなります。
つまり、企業は自社株買いに使った資金分だけ、将来的な事業成長や利益改善の機会を失うことになる可能性があります。
また、自社株買いによって株価が上昇する場合、企業の評価が高くなることで、株式報酬などの企業負担も大きくなります。
以上のように、自社株買いが、企業の業績改善や将来性の向上に必ずしも繋がらないということがあります。
そのため、企業は、自社株買いを行う前に、投資家や株主とのコミュニケーションを図り、自社株買いが投資家にとって適切であるかどうかを確認することが重要です。
EPSが減少する時
EPSが減少する要因には以下のことが考えられます。
<当期純利益の減少>
<発行済み株式数の増加>
当期純利益が減少すれば、EPSも減少することになります。
発行済み株式数が増加すると、当期純利益は同じでもEPSが減少することになります。
また、当期純利益の減少すると、発行済み株式数が同じでもEPSが減少することになります。
このような場合、EPSの減少によって株価の下落につながることがあります。
例えば、
先程のAという企業の当期純利益が10億円で発行済み株式数が1000万株とします。
この企業のEPSは、
10億円÷1000万株=100円
<当期純利益の減少の場合>
当期純利益が10億円から5億円に減少すると、
5億円 ÷ 1000万株= 50円
<発行済み株式数の増加>
発行済株式数を1000万株から500万株増やすと、
10億円 ÷ 1500万株= 約67円
EPSは、約67円となります。
上記のことから、EPSが減少する原因は、当期純利益の減少と発行済み株式数の増加の両方が考えられるます。
【投資家がEPS(1株当たり利益)を見るとき、以下のような観点から判断することができます。】
過去のEPSと比較する
投資家は、過去のEPSと比較することで、企業の利益性がどのように推移しているかを把握することができます。 EPSが過去に比べて増加傾向にある場合は、企業の利益性が向上していると判断することができます。
逆にEPSが減少傾向になれば、何か問題を抱えている可能性もあります。
アステラス製薬(4503)
同業他社と比較する
EPSは、企業の業績を評価する指標であるため、同業他社のEPSと比較することで、企業の競争力を把握することができます。
同業他社のEPSが高い場合は、競合優位性を持っている企業と判断することができます。
武田薬品工業(4502)
発行済み株式数とEPSの関係を見る
発行済み株式数が多い場合、EPSが低くなる傾向があります。
投資家は、企業の発行済み株式数とEPSの関係を把握することで、EPSの変動要因を把握することができます。
まとめ
投資家は、トレンド、同業他社との比較などを考慮し、EPSが減少する原因を分析し、企業の財務状況や業績を判断することが重要です。
EPSが減少しても、それが一時的なものである場合や、企業が今後成長を見込めると判断できる場合は、引き続き投資を検討しましょう。