日本の「社会保険」は充実していることで知られていますが、あまり意識をしていない人もいるのではないでしょうか?
特に会社員の方は、「社会保険完備」であれば特に心配はないと思っているかもしれません。
社会保険には、
「医療保険」
「年金保険」
「介護保険」
「雇用保険」
「労災保険」
の5つが中心になっています。
今回は、このなかから「介護保険」に注目してみましょう。
【公的介護保険の基礎知識】
一般的に「介護保険」といえば公的な介護保険のことを言いますが、「民間の介護保険」もあるのでここでは「公的介護保険」としています。
社会保険のなかでもなんとなくわかりにくいのが「介護保険」ではないでしょうか?
「公的介護保険」の基本知識を説明していきます。
介護保険の仕組みは年金保険に似ていますが、基本的な知識を覚えていきましょう。
「公的介護保険」の基礎知識
「公的介護保険」は、介護が必要になった高齢者や家族を支えることを目的にしている社会保険のひとつです。
40歳以上になると加入義務があるので、被保険者として保険料を納めることになります。
「公的介護保険」を実際に利用できるのは65歳以上ですが、特定の疾病を理由に介護が必要だと診断されれば40歳~64歳の人も利用が可能になります。
「公的介護保険」の財源は保険料と税金でまかなわれています。
保険料と税金の比率は50%で、保険料は40歳以上の人が支払う仕組みです。
介護保険料の金額と納付は?
介護保険の保険料は、65歳以上の人と40歳~64歳の人では負担額が異なります。
65歳以上の人を第1号被保険者で、40歳~64歳の人は第2号被保険者に分類されています。
第1号被保険者が収める保険料を第1号保険料と呼び、第2号被保険者が収める保険料を第2号保険料といいます。
それぞれの保険料について順に説明をしていきます。
・第1号保険料
65歳以上の人が該当する第1号保険料は、3年ごとに市町村が基準額を決定しています。
全ての人の保険料が一律だと収入によって保険料の負担が異なるので、本人や世帯所得によって区分していますが詳細は市区町村によって異なります。
・第2号保険料
40歳~64歳の人が該当する第2号保険料は、毎年厚生労働省(国)が決定しています。
医療保険料に介護保険料を上乗せして納めることになりますが、会社員と自営業主では納付方法が異なります。
会社員の場合は給料から天引きすることになっていますが、自営業やその他の人は納付書や口座振替で納めます。
第1号保険料と第2号保険料は、制度を導入した2000年と比較すると約2倍~約2.6倍です。
「公的介護保険」の概要
「介護保険」は、
被保険者である40歳以上の方、
保険者である市区町村、
都道府県や市区町村から指定されている介護サービス事業者
の3つから成り立っている保険です。
被保険者は、保険者である市区町村に介護保険料の納付をします。
介護が必要になったときには介護認定の申請を市区町村がおこなうことで、介護被保険者証や負担割合証などの認定と公布が可能になります。
「介護事業サービス」は、
社会福祉法人、
医療法人、
民間企業、
非営利組織
などが介護サービスを提供する役割を担っています。
介護の必要な被保険者に対する介護保険サービスの提供をおこなうことで、費用の1割を被保険者に負担してもらいます。
残りの9割の費用は、「介護事業サービス」が保険者である「市区町村」に請求をします。
「市区町村」は、国民健康保険団体等を通じて「介護事業サービス」へ費用支払うことになっています
この3つの関係の中心で調整と連携をおこなっているのが、「地域包括センター」とよばれるところです。
「地域包括センター」は地域に在住する高齢者の暮らしをサポートするために作られた拠点で、全国に5000か所以上の施設があります。
【公的介護保険のサービスの利用方法と内容】
介護保険のサービスを受けるには、「市区町村」から「要介護」か「要支援」の認定してもらう必要があります。
また、その結果によって受けられるサービスに違いがあるので注意が必要です。
ここからは、「介護保険サービス」の「利用方法と内容」について説明をしていきます。
充実している日本の「介護保険サービス」ですが、内容をしっかり把握しておくことが重要になります。
「公的介護保険」を利用するまでの流れ
「要介護認定の申請」
介護利用者(被保険者)か家族が、「市区町村」の窓口に「要介護認定の申請」をおこないます。
申請に必要なものは以下の物です。
・申請書
・介護保険の被保険者証
・健康保険証(第2号被保険者の場合)
・マイナンバーカードかマイナンバー通知カード
・医師(主治医)の意見書
市区町村から依頼を受けた医師(主治医)による意見書が判定の参考資料になります。
主治医がいない被保険者は、市区町村の指定による診察が必要です。
「訪問調査の実施」
市区町村の職員による心身の状況調査を自宅でおこないます。
調査項目は基本調査の74項目と特記事項が基本です。
訪問調査では、麻痺や関節の動きをはじめ金銭感覚や物忘れなどについても調査をおこないます。
実際に行動をする調査と家族や本人への質問によって判断することになります。
:1次判定
訪問調査の結果をコンピュータに入力して、そのデータをもとに1次判定をおこないます。
:2次判定(介護認定審査会)
訪問調査による1次判定の結果と医師(主治医)の意見書を参考に審査結果を判断します。
「通知結果(要介護認定申請の審査結果の通知)」
介護認定審査会の審査結果を基準にした「要介護度の通知」があります。
審査開始から結果通知までの日数は原則30日以内になっていますが、市区町村によって差があるようです。
①通知結果が非該当の場合
②通知結果が要支援の場合
③通知結果が要介護の場合
在宅で利用できる「公的介護保険」のサービス
自宅での生活を続けながら介護保険の適用サービスを受けることを「居宅サービス」と言います。
「居宅サービス」には、
・訪問介護
・通所介護
・宿泊介護
・その他の介護
の4つの介護サービスがあります。
居宅サービスは、「都道府県」・「政令指定都市」・「中核市」が指定や監督をおこないます。
市区町村が指定や監督をおこなうのは、地域密着型サービスといいます。
「訪問介護」
訪問介護サービスは、ヘルパーや看護師などが訪問する介護が代表的なものになります。
食事や入浴を介助する身体介護と掃除や洗濯などの生活援助が存在します。
訪問介護で受けられる主なサービス
訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリなど
「通所介護」
通所介護サービスは、日帰りで通える日常生活の介護を受けるデイサービスやリハビリを受けることができるデイケアなどがあります。
通所介護で受けられる主なサービス
デイサービス(通所介護)、デイケア(通所リハビリテーション)など
「宿泊介護」
宿泊介護サービスは、日帰りのデイサービスではなく短期宿泊のショートステイが該当します。
宿泊介護で受けられる主なサービス
ショートステイなど
「その他」
上記3件以外のサービスを「自宅を安全にするサービス」といいます。
福祉用具の購入費やレンタル費用の支給をはじめ、住宅改修サービスなどもあります。
その他の受けられる介護サービス
住宅改修、福祉用具の購入費用、福祉用具のレンタル費用など
介護保険を利用して入居できる施設
「介護保険サービス」は要介護度によって施設への入居支援もおこなっています。
介護保険を利用する介護保険施設は、所得に応じた費用面の優遇処置があるので人気が高いのが現状です。
必要な介護状況によって
「特別養護老人ホーム」
「介護老人保健施設」
「介護医療院」
がありますが、入居希望をしてもすぐに入居できるとは決まっていないので注意が必要です。
・特別養護老人ホーム
入居条件 要介護3以上(原則)
・介護老人保健施設
介護老人保健施設は「老健」と呼ばれている介護施設です。
医学的な管理が必要な看護や介護を受けることができます。
機能訓練なども受けて、3ヵ月程度を目処に自宅(在宅)への復帰を目指します。
入居条件 要介護1以上
・介護医療院
入居条件 要介護1以上
【要介護認定の目安と支給限度額とは?】
介護保険は利用に応じた費用の負担を軽減できるサービスですが、要介護度によって支給限度額(支給上限額)が定められています。
支給限度額を超えた金額を利用することもできますが、超過分は自己負担になるので注意が必要です。
要介護認定の目安と支給限度額
要介護認定の目安と支給限度額を以下に記載しておきます。
支給限度額は改定することも考えられますので、最新の情報を入手することをオススメします。
介護保険サービスの単価は基本的に1単位10円で計算しますが、事業所の所在地や介護サービスの内容によって若干異なることがあります。
・要支援1
認定の目安
ほぼ日常生活は自分でおこなえる状態で、要介護になることへの予防を含めた支援が必要な場合。
支給上限額(月額)
5,032単位
・要支援2
認定の目安
日常生活をするには少しの支援が必要な状態で、介護サービスの利用によって改善が望める場合。
支給上限額(月額)
10,531単位
・要介護1
認定の目安
歩行や立ち上がる行為に安定感がない状態で、日常生活はほぼ自分でおこなえますが入浴や排泄に対する一部介助が必要な場合。
支給上限額(月額)
16,765単位
・要介護2
認定の目安
自力での歩行や立ち上がりが困難な状態で、入浴や排泄に関しても一部介助や全介助が必要な場合。
支給上限額(月額)
19,705単位
・要介護3
認定の目安
自力で歩行や立ち上がりができない状態で、入浴・排泄・衣服の着替えなどの全面的な介助が必要な場合。
支給上限額(月額)
27,048単位
・要介護4
認定の目安
全面的な能力低下が見られる状態で、日常生活全体の介助が必要な場合。
支給上限額(月額)
30,938単位
・要介護5
認定の目安
日常生活の全般で介助が必要な状態で、介護がない状態では日常生活をすることが不可能な状態。
支給上限額(月額)
36,217単位
介護給付と予防給付の違いとは?
介護保険サービスには、「介護給付」と「予防給付」があります。
「要介護1」~「要介護5」に認定された場合は、
介護保険施設への入居条件は要介護に認定された場合で、
特に特別養護老人ホームへの入居条件は基本的に要介護3以上になっています。
【民間介護保険は必要なのか?】
ここまでは、「公的介護保険」の基本的な説明をおこなってきました。
日本の「公的介護保険制度」は充実しているのですが、不満な点や一部の人が利用できないケースも考えられます。
ここでは、民間介護保険について説明をしていきます。
民間介護保険の基本的な知識や必要性を理解することで、自分に適した対応策を考えることができるはずです。
「公的介護保険」と「民間介護保険」の違いとは?
「公的介護保険」と「民間介護保険」には、様々な違いがあります。
言葉は似ていますが、役割や利用条件などを考えると年金保険などとは違う認識が必要になります。
「公的介護保険」と「民間介護保険」の違いを項目別に説明していきます。
基本的なことですが、この違いが民間介護保険の必要性の参考につながるはずです。
「民間介護保険」は契約者ごとに違う「保険商品」
民間介護保険は既に説明していますが、あくまでも保険商品のひとつです。従って「公的介護保険」のように同じ条件や保障にはなっていません。
自由度が高いということは、選択の仕方によって全く違う保障内容になることも考えられます。配偶者や子どもの有無はもちろんですが、資産状況や属性を考えて必要性を考えることが重要です。
「加入年齢」や「適用年齢」の違い
民間介護保険の適用時期は、加入後に各保険会社が定める条件を満たした場合になります。仮に幼少期のお子さんでも加入年齢と適用年齢の条件を果たしていれば、条件を満たしたと判断されることが一般的です。
保障内容の違い
介護保険のサービス内容が充実していても、費用面が生活面まで脅かすようになるのではストレスにしかなりません。
民間介護保険は受け取り方法にも一時金や年金といったタイプがあるので、生活費用の負担を軽減することが期待できます。
貯蓄に対応できる民間介護保険
民間介護保険にも費用を抑えられる掛け捨てタイプもありますが、満期返戻金や死亡保険金だけでなく加入年数に応じて「お祝い金」が発生する商品も存在します。
また、公的介護保険は生活保護など特定の理由がなければ保険料を支払い続ける必要がありますが、民間介護保険は支払い契約条件を満たしたとき以降の保険料は免除されるケースが多くなっています。
民間介護保険は保険適用条件に注意が必要
おそらく保険会社の説明を受けるとこれまでの説明のように民間介護保険のメリットを中心に説明するはずです。
また、公的介護保険の不安点を挙げることも予想できます。
確かに補償内容や老後の生活を考えるとメリットが目立つ民間介護保険ですが、デメリットもあるのでしっかり理解しておくことが必要になります。
「民間介護保険」のデメリットは、
「契約条件の豊富さ」
「保険料の負担」
です。
保険料の負担が大きくなるのは簡単に理解できると思いますが、なぜ契約条件の豊富さがデメリットなのでしょうか?
民間介護保険の注意点は、保険金の支払い条件が商品ごとに違うという点です。
ケガで一時的に介護が必要な状態でも、介護認定で条件を満たせなければ保険金は受け取れません。
保険料の支払い条件が低くなれば、必然的に保険料が高くなることが予想できます。
民間介護保険への加入を検討する場合は、保険金支払い条件や保険料を充分に理解することをオススメします。
民間介護保険が必要だと考えられる人とは?
民間介護保険が必要だと考えられる人は、大きくわけて以下のような人になります。
もちろんこの他にも考えられますが、代表的な理由を紹介しています。
・ひとり暮らしの人
・家族や子どもに迷惑をかけたくない人
・老後の生活が不安な人
・公的介護保険では難しいサービスを希望する人
ひとり暮らしの人や家族や子どもに負担をかけたくない人には、民間介護保険が必要になることも考えられます。
難しい面もありますが、必要に応じて「掛け捨て」の民間介護保険への加入を検討しても良いのかもしれません。
老後の生活が不安な人は年金収入だけでは、生活が難しいと考えている人が多いと思います。このタイプの人は、属性にもよりますが「掛け捨て」または別の解決策がオススメです。
最後の公的介護保険では難しいサービスを希望する場合もケースによって検討をする必要があります。
特に高度な水準の介護サービスを希望する場合は、公的介護サービスの利用だけではまかなうことはできません。
公的介護保険だけでは不足なのか?
「公的介護保険」の介護サービスでの不足点は、年齢的なことや高いレベルの介護サービスの提供になります。
また、生活資金という面でも「公的介護保険」には現金支給がないので、不安材料になると考えられます。
そこで民間介護保険の中でも貯蓄性のある介護保険がオススメされることが多いようです。
民間の老齢年金と同じような位置づけとして、老後の生活資金の不安面を解消する方法のひとつになっています。
民間介護保険は条件を満たせば現金での保険金を受け取ることができますので、生活資金の負担を軽減できます。
また、満期返戻金や死亡保険金もあることが人気の要因になっています。
充実している「公的介護保険」ですが、やはり多方面から考えると不安点がないわけではありません。
公平な目で見ると「公的介護保険」だけでは不足だと言えるのかもしれません。
老後の生活資金が不安な人の対策方法
老後の生活資金が不安だという人の場合は、「民間介護保険」以外にも対策方法はあります。老後の生活を考えると同時に配偶者や子どものことも考えることも必要です。
「民間介護保険」を検討するときは、保険会社の人などに相談をすることもあると思います。全てとは言いませんが、「貯蓄型介護保険」をすすめてくるケースが多いのではないでしょうか?
「貯蓄型介護保険」は良いサービスのように思われますが、保険本来の役割を考えると決してオススメできる商品ばかりではありません。
状況にもよりますが、「介護保険」や「生命保険」は掛け捨てで、貯蓄は別に考えることをオススメします。
保険の位置づけと公的介護保健の充実度
「民間介護保険」に加入をするのであれば、掛け捨てタイプをオススメしましたが、「生命保険」でも同様のことをオススメしています。
基本的に「保険」と「貯蓄」は別物として考えた方がコストパフォーマンス的に良いことが多いといわれています。
「有料介護老人ホーム」のような高額費用が必要な介護サービスを希望する人であれば、必要な費用を資産運用で蓄えることもできます。
もちろん、資産運用にはリスクが伴うので慎重な運用が必要ですが、充分可能な対応策のひとつです。
また、保険の本来の位置づけを考えると多くの人が関係する老後の対策は、保険で対応することがオススメできません。
保険は発生確率が低く、マイナスリスクが大きいケースで必要になるものです。
「生命保険」・「火災保険」・「自動車保険」でも同様のことが言えますが、本当に自分に必要な保険だけに加入することをオススメします。
【まとめ】
「介護保険」の基礎知識と老後に訪れることが予想できる介護サービスについて説明をしました。
「公的介護保険」は優れている制度ですが、今後どのようになるかはわかりません。
介護保険には「公的介護保険」と保険商品のひとつである「民間介護保険」が存在します。
民間介護保険には様々なメリットもありますが、デメリットも存在するので加入を考えている場合は慎重な対応が重要になります。