会社員の方は天引きされているのであまり気にしていない人も多いようですが、物価上昇に対して収入が増えないので収入と支出のバランスが崩れている人も少なくありません。
今回は、収入減の影響で増加が予想される住民税の非課税について説明をしていきます。
自分は関係がないと思っている人も、将来的に知っておいて損はない知識です。
【住民税非課税の基本知識】
住民税が非課税の世帯とは、住民税を課せられる人がいない世帯のことです。
会社員の方にはあまり縁がないと思いますが、2021年厚生労働省の調べだと23.7%の世帯が住民税非課税世帯になっています。
ここでは、住民税非課税の基本知識を説明していきます。
この記事を読むことで、他の税金とあわせながら住民税の基本知識を理解することができます。
税金の基本
税金は普通に生活をしているだけで、なにかしらの形でかかわることになります。
税金には所得税や住民税のような直接税と消費税などの間接税が存在します。
直接税のなかでも所得税や相続税は国税になりますが、住民税は地方税に該当します。
ちなみに住民税は「道府県民税」と「市町村民税」をあわせた税金です。
所得税と住民税
今回は住民税非課税の内容になりますが、住民税には所得税も関連しています。
ここでは所得税と住民税の基本を簡単に解説します。
<所得税>
所得税は個人の所得に対する税金です。
所得額は1年間の収入から控除対象の金額をひいた金額になります。
課税所得にたいしてかかる税金の額は、所得が多くなるほど税金が高くなる「累進税率」になっています。
会社員と個人事業主では納税方法が異なるのが特徴です。
会社員の人は、会社がまとめて税金を納めてくれます。
これが源泉徴収になるので、年末調整で個々の控除額を会社に提出することで調整しています。
自営業や個人事業主の人は、自分で税額を計算して税務署に申告をします。
これが確定申告です。
<住民税>
住んでいる場所や会社のある場所に収める税金が住民税です。
住民税は都道府県、市区町村に対して納める税金になります。
都道府県民税と市区町村税は一括して納めるので、一般的にはあわせたものを住民税と呼んでいます。
会社員と自営業の人では、納め方が異なるのが特徴です。
また、所得税は1月~12月を基準に計算していますが、
住民税は6月~翌年5月を1年のサイクルにしているので納めるタイミングが異なります。
住民税の仕組みと所得割や均等割とは?
住民税も所得の計算自体は所得税と同じように1月~12月を1年間として計算しますが、納める時期が翌年の6月~5月になっているので所得税とずれるのが特徴になります。
会社員の人は、翌年の6月から翌々年の5月まで天引きで納めることになります。
個人事業主やフリーランスの人は、翌年6月以降に収めます。
住民税で誤解されやすいのが、税金の対象になる所得年度の違いです。
例えば今年課税所得がない人でも前年に所得があれば、住民税が発生することもあります。
具体例だと全く所得のない人が新卒等で会社に入社をすると、1年目は住民税が発生しません。
2年目に1年目の所得に対して住民税を納めることになります。
住民税は、所得割と均等割といった2種類の課税方法からなりたっています。
必ず覚える必要はありませんが、知っていて損はないので簡単に説明をしていきます。
住民税の所得割
所得割は、1年間の所得に対してかかる住民税です。
所得控除なども考慮したうえで既定の税率による算出方法をもちいています。
所得割の基準税率は都道府県民税が4%で市区町村民税が6%で合計10%となっています。
実際の税率は自治体によって異なるので注意が必要です。
住民税の均等割
均等割は、所得に関係なく一律にかかる住民税です。
都道府県民税は1,500円で市区町村民税が3,500円になっていますが、自治体によって異なります。
一般的に所得割は所得の10%程度で、均等割が約5,000円です。
住民税の非課税にも「所得割」のみの非課税と「所得割」「均等割」の両方が非課税のケースがあります。
【住民税非課税世帯の条件とは?】
これまでの説明で、所得税と住民税の関連性などが理解できたと思います。
次に気になるのは住民税非課税世帯のことではないでしょうか?
所得税非課税に関する知識はあっても、住民税非課税の基準がわからないという人もいると思います。
ここでは住民税非課税世帯の条件について解説をしていきますので、参考にしてください。
住民税非課税世帯とは?
住民税の非課税には、所得割のみの非課税と所得割・均等割の両方が非課税のケースがあると説明しました。
一般的に住民税非課税世帯といわれるのは、所得割と均等割の両方が非課税になっている世帯のことです。
稀にですが、非課税所得と非課税世帯を混同させている人がいますが、根本的に異なる内容なので注意が必要です。
簡単に説明すると非課税世帯だからといって所得のすべてが非課税になるわけではありません。
また、非課税所得があるからといって必ずしも非課税世帯になることはありません。
あくまでも所得に対する税金が非課税という意味になります。
住民税非課税世帯に該当する条件
住民税非課税世帯は、所得割と均等割の両方が非課税になっている世帯のことをいいます。
もちろん住民税非課税世帯に該当する基準があるので、条件によって所得割のみが非課税になるケースもあります。
住民税非課税世帯に該当する条件とはどのような条件なのでしょうか?
所得割のみの非課税についても説明していくので参考にしてください。
▼所得割のみ非課税になる条件▼
同一生計に配偶者や扶養親族がいる場合と、いない場合で所得割が非課税になる条件が異なります。
所得割が非課税になる条件は、前年度の総所得額が以下の金額をしたまわる場合です。
・同一生計に配偶者や扶養親族がいる場合
35万円×(本人、配偶者、扶養親族の合計人数)+42万円
・同一生計に配偶者や扶養親族がいない場合
45万円
▼所得割と均等割が非課税になる条件▼
所得割と均等割が両方非課税になる条件は自治体によって異なるので、ご自身の該当自治体で確認することをオススメします。
・生活保護を受けている人
・障害者、未成年者、寡婦またはひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下の人。
ただし、給与所得者は異なります。
・前年度の総所得が基準以下の場合。
基準になる総所得は自治体によって異なります。
一般的に単身者で給与所得のある人は、年収100万円前後が住民税非課税世帯になる基準です。
老齢年金受給者の住民税非課税世帯とは?
ここまでは給与所得者などを基準に住民税非課税世帯について説明をしてきましたが、ここでは老齢年金受給者の住民税非課税世帯について解説をしていきます。
年金受給者の年金は非課税だと思っている人もいるようですが、年金収入は雑所得に該当するので課税所得のひとつになっています。
年金収入は課税所得ですが、公的年金控除を利用できるので全額が課税対象になるわけではありません。
公的年金控除の控除額は、65歳未満が60万円で65歳以上だと110万円になります。
また、非課税対象には単身世帯と配偶者や扶養親族がいる場合で、異なるので注意が必要です。
年金受給者であっても住民税の均等割が非課税になる基準は自治体によって異なるので、該当自治体で確認することをオススメします。
【住民税非課税世帯のメリット】
住民税非課税世帯になると、様々な面で優遇処置が採用されます。
この部分をメリットとして考えるのは難しい面もありますが、ここではメリットとして紹介していきます。
住民税非課税世帯の優遇処置は、
「国民健康保険料・介護保険料」
「国民年金保険料」
「教育費用」
「医療費」
などの減額や免除があります。
国民健康保険料の減額
住民税非課税世帯の国民健康保険料は前年度の総所得によって20%~70%の減免処置になります。
介護保険料に関しても自治体によって異なりますが、最も低い水準に設定されるので減免されることになります。
国民年金保険料の免除
住民税非課税世帯の国民年金保険料は、申請をおこなうことで免除にすることができます。
申請をしないとただの未払いになってしまいますので、必ず申請をするようにしてください。
教育費用の減免制度
住民税非課税世帯は0歳~2歳の保育費用が無料になります。
また高等教育支援制度を利用して、授業料の減免や給付型奨学金の申請が可能です。
高等教育支援制度は、大学、短期大学、高等専門学校、専門学校が対象になっています。
給付型奨学金を受けるには、一定以上の成績を維持することが必要です。
医療費の自己負担額が減額
月額の医療費が一定額を超えると利用できる高額医療費減額制度の制限金額が、通常よりも低い金額に設定されます。
70歳未満の住民税非課税世帯であれば、自己負担の上限額は35,400円です。
【住民税非課税世帯のデメリット】
住民税非課税世帯の場合は、公的費用が減免されるなどのメリットがあります。
一方でもともと低所得世帯向けの制度なのにメリットばかりなのでしょうか?
ここでは、住民税非課税世帯のデメリットについて説明をしていきます。
くわえて世帯分離についても紹介しますので、参考にしてください。
住民税非課税世帯のデメリットとは?
住民税非課税世帯のデメリットは、特にありませんというのが回答になります。一方で、
わざわざ住民税非課税になるメリットがないのも本音です。
今回説明をしている住民税非課税に対するメリットは、あくまでも最低限の生活レベルを確保できるという安心感です。
むしろ、デメリットの方が多いといえます。
住民税非課税になるために「世帯分離」を使う注意点!
住民税非課税世帯になるために「世帯分離」という制度を活用するケースがあります。
世帯分離とは同居をしている親子の世帯を住民票上でわけることです。
世帯分離をすると親が低所得だと介護保険料の優遇処置や低所得者向けの給付金を受け取れるメリットがある一方で、国民健康保険料の納付額が高くなることもあるので慎重な対応が必要です。
【iDeCo(イデコ)の節税対策!イデコで住民税を節税する工夫!】
今回は住民税非課税世帯の話題ですが、最後にiDeCo(イデコ)と住民税の関係を説明していきます。
iDeCo(イデコ)は節税効果が高いことで知られていますが、住民税の節税効果を理解していない人もいるようです。
iDeCo(イデコ)のメリットでもある3つの節税効果を順番に解説していきますので、節税対策の参考にしてください。
iDeCo(イデコ)で節税1!掛け金で節税効果!
iDeCoの節税対策の1つ目は、掛け金が全額所得控除になることです。
所得額が多ければ多いほど節税効果が高くなります。
iDeCo(イデコ)を始める当初は所得が低い人でも、長年積立ているうちに年間所得が高くなることを期待できます。
日本の所得税は累進課税なので単純に年間の掛け金×税率分は節税できることになります。
住民税で期待できる節税効果は、所得割での節税になります。
住民税の所得割は前年所得によって決定するので、個人差はありますが長期間の運用になれば大きな節税効果が期待できます。
iDeCo(イデコ)で節税2!運用中の利益で節税効果!
iDeCo(イデコ)の2つ目の節税効果は、運用中の配当金や分配金などといった運用益に対する節税になります。
一般的な資産運用で得られる配当金や分配金には利息の20.315%が課税されるので、長期運用の節税効果は絶大です。
資産運用の基本は、長期運用で福利効果を最大限に利用するのが理想です。
運用益をすべて再投資できるiDeCo(イデコ)の福利効果が高いことがわかります。
iDeCo(イデコ)で節税3!受け取り方を工夫して節税効果!
iDeCo(イデコ)の積立金を受け取るときは、一時金として受け取る「退職金控除」と年金で受け取る「公的年金控除」を利用することができます。
退職金控除は、勤続年数によって異なります。
簡単にいえば、iDeCo(イデコ)の一時金が退職金控除額より低ければ非課税ということです。
<退職所得控除額の計算方法>
・勤続年数20年以下
40万円×勤続年数
※80万円以下の場合は80万円
・勤続年数20年超
800万円+70万円×(勤続年数-20年)
※勤続年数は原則切り上げ
公的年金控除は、年金を受け取る年齢によって控除額が異なります。
65歳未満の場合は60万円までで、65歳以上は110万円まで非課税で受け取ることが可能です。
住民税は、前年度の所得額によって異なります。
iDeCo(イデコ)の積立額は個人差があるので一概には言えませんが、節税効果を最大限利用するために年金と一時金を併用することで可能になります。
【まとめ】
今回は住民税非課税世帯のメリットとデメリットを説明しました。
住民税非課税世帯のメリットといっても住民税非課税世帯自体にメリットはありません。
iDeCo(イデコ)の積立金を受け取る場合は、一時金受け取りと年金受け取りをうまく利用することで節税効果を大きくすることができます。
資産的にゆとりがある場合は、年金受け取りを65歳以降にすることをオススメします。